
旋盤を触り始めた頃、僕が最初にぶつかった壁が“芯出し”だったんです。
教科書には「ダイヤルゲージで振れを取る」としか書いてなくて、実際に現場でやってみると、その言葉の軽さが信じられないほど難しい。数字は落ち着かないし、爪を締めるたびに振れが増える。あの感覚は今でも覚えているんですよね。
しかも厄介なのは、「ちゃんと芯が出ていないのに、それに気づけない状態」で加工してしまうことなんです。外径が微妙に細くなる、端面が荒れる、肩が繋がらない…その原因が“芯出し”だと気づくまでに、僕は何度も失敗を繰り返しました。
この記事では、僕が現場で実際に体験しながら身につけてきた芯出しのコツや心の動きを軸に、3爪と4爪の違いを「リアルな視点」で解説していきます。
チャックの芯出しの正しい手順|3爪と4爪の違いを現場目線で解説
初めて芯出しに挫折した日の“どうしようもない感情”について

入社してすぐ任されたのが、外径を決める単純な丸棒の加工でした。
「3爪だから芯は勝手に出てる」と思い込んでいた僕は、そのまま削り始めたんですよね。でも仕上がったワークをノギスで測ると、なぜか片方だけ細い。意味が分からなくて先輩に見せると、第一声が「芯出てねぇよ」だったんです。
最初は本当に理解できませんでした。つかんだだけで中心に来ると思ってたんですよ。でも実際には、爪の摩耗・スクロールの偏り・外径の偏肉、こういう色んな要素が芯ズレを起こしていたんです。
その後4爪に触れたときはさらに衝撃でした。
「自由度が高い分、自分が何をしたか全部数字に出る」。
爪を1/10回しただけで針の動きが変わる。自分の手つきや呼吸まで結果に出る。僕はそこで初めて“加工はごまかせない”ことを本気で実感したんです。
数字が合わずに手が震えたあの瞬間、心の中で何が起きていたのか

正直、最初の数ヶ月は怖かったんです。
ダイヤルゲージの針が揺れるだけで心臓がバクバクするし、「これ以上触ったらもっと悪化するんじゃないか」と手が止まる。
芯出しって、ただの技術じゃなくて“自分の未熟さが露出する瞬間”みたいな感覚があるんですよね。
でも、その恐怖心が消え始めたタイミングがありました。
それは「山側を緩めて反対を締める」という基本の“意味”を心が理解した瞬間でした。
ただの作業が、急に“流れを読める作業”に変わった感じです。
なぜ芯が出ないのか分からず“自分が悪いんだ”と思い込んでいた頃
芯出しで多くの人がつまづくポイントって、技術よりも「自分の手の動きに自信が持てない状態」なんですよね。
・振れの読み方が分からない
・どこをどれくらい触ればいいかがイメージできない
・爪を回す量が感覚でバラバラ
・ダイヤルの数字が“ただの数字”のまま
僕もずっとそうでした。
でも、ある瞬間から数字が“ワークがどう動こうとしてるかを示す言葉”だと気づくようになったんです。
この感覚に気づくまでが、芯出しの本当のスタート地点なんですよね。
芯出しで迷わなくなるための考え方と実感した変化

芯がピタッと決まり始めた時に起きた“小さな奇跡”
芯出しに慣れてくると、数字を読むスピードよりも、自分の動作に変化が出てくるんですよね。
・爪を回す量が自然と一定になる
・ワークの動きを頭の中でイメージできる
・反対側の爪がどれくらい作用しているか分かる
・0.05mmのズレが“感覚として認識”できるようになる
こういう小さな感覚が積み重なって、芯がスッと決まるようになる。
これは本当に実感としてあって、芯出しの上達って「技術」より「体感の積み上げ」の方が大きいんですよね。
“あ、もしかして俺…分かってきたかも”と気づいた瞬間
僕が一番強く実感したのは、
「芯出しが上達すると、加工全体のミスが一気に減る」
ということなんです。
外径が安定するのはもちろん、
端面の仕上がり、段付きのつなぎ、穴加工のセンター…
全部が自然と精度が上がってくるんですよね。
つまり芯出しは “単なる段取りの一部” じゃなくて、
“旋盤加工の根っこそのもの” だということに気づいたんです。
過去の自分にこっそり教えてあげたい“芯出しの本質”

もし今「芯出しが苦手だ」と感じているなら、それは全然悪いことじゃないんです。
むしろ“苦手意識がある”という時点で、あなたはすでに技術の入口に立っている。
焦らなくていいし、完璧じゃなくてもいい。
まずは「数字が何を示しているのか」をゆっくり読み取るところから始めれば十分なんです。
芯出しを武器に変えていくために必要だったことと、今思うこと
今の自分なら、当時の不安な自分をこう励ます

25年近く旋盤に触れてきて思うのは、芯出しが上達すると“仕事の成果”だけじゃなく、“自分の心の安定”にも影響するということなんです。
芯が出ない時期って、どこか気持ちまで焦っているんですよね。呼吸が浅いし、判断も雑になる。
でも芯が早く決まるようになると、作業が落ち着き、気持ちに余裕が生まれる。
僕にとって芯出しは「自分の内側の状態がそのまま現れる作業」なんです。
芯出しが怖くなくなった今だからこそ言える“未来の話”

これを読んでいるあなたが、もし今“芯出しが壁”になっている状態なら、
その壁は絶対に乗り越えられます。
むしろ、乗り越えた瞬間から旋盤の世界が一段階広がります。
3爪と4爪の違いを理解し、数字の意味を読み取れるようになってきたら、次は「自分の癖」を知るとさらに強いです。
手が強く回す癖があるのか、緩めるのが苦手なのか、焦ると左右を見失うのか。
自分の癖を知ると、芯出しは一気に楽になります。
あなたの芯も必ず“ストン”と決まる瞬間が来る

芯出しは、ただの作業じゃないんです。
自分の未熟さ、焦り、癖…すべてが表面化する作業なんですよね。
だからこそ、上手くいかなくて当然なんです。
でも、諦めずに向き合っていれば、必ず“芯がストンと決まる瞬間”がやってきます。
その瞬間の気持ちは、言葉では説明できないくらい気持ちいいんですよね。
あなたの芯出しも、必ず早く・正確に・安定して決まるようになります。
それは努力の結果ではなく、「積み重ねた体感」があなたをそこへ連れていってくれるんです。